はじめに
この記事ではこれまでの住宅ローンの金利動向や、2024年以降の住宅ローンの金利の今後の見通しについて解説しています。
目次
1. 足元の金利概況
変動金利(銀行間の金利競争が激化)
住宅ローンは、銀行にとっては、優良な個人との取引を開始できる重要商品です。不動産という優良担保がありながら、1回融資すると長い期間取引が継続されるためです。しかも、その人が住宅ローンを完済したころには資産運用に興味を示すような人になっている可能性もあり、 都市銀行や地方銀行だけでなくネット銀行も含めて激しい顧客争奪戦が繰り広げられている領域です。
しかも、「変動金利タイプ」は住宅ローンの金利を引き上げる権利を銀行側が持つ商品です。将来、金利を引き上げることもできることもあって、ネット銀行などでは条件を満たせば0.2%ぐらいの低い金利の変動金利の住宅ローンを提供しているほどです。
固定金利(長期金利の上昇傾向に追随)
固定金利に関しても、変動金利と同じく銀行同士の引き下げ幅競争が行われていますが、変動金利と異なるのは2022年から2024年にかけて、確実に金利が上昇しているという点です。この金利上昇の背景には、世界的なインフレや、日本国なの金利の上昇があります。固定金利の基準金利は長期金利(10年もの国債利回り)の影響を受けるため、長期金利の上昇に合わせて固定金利タイプの金利も上昇しています。
上のグラフについては長期金利の推移(過去10年)を表したものになっていますが、現在の金利水準は過去10年間で最高水準となっています。
2. 主要銀行の金利動向
以下は、人気の住宅ローン金利(変動金利・10年固定金利)の直近の金利動向です。
銀行名 | 金利タイプ | 2024年7月金利 | 2024年8月金利 |
---|---|---|---|
auじぶん銀行 | 変動 | 0.329% | 0.329% |
10年固定 | 1.275% | 1.315% | |
住信SBIネット銀行 | 変動 | 0.320% | 0.330% |
10年固定 | 1.394% | 1.355% | |
SBI新生銀行 | 変動 | 0.420% | 0.420% |
10年固定 | 0.950% | 0.950% | |
三菱UFJ銀行 | 変動 | 0.345% | 0.345% |
10年固定 | 1.250% | 1.270% |
各銀行の動向
2024年8月の住宅ローンの金利について解説していきます。今月は住信SBIネット銀行で変動金利タイプの引き上げが見られました。固定金利タイプの金利も引き上げに動いた金融機関が多くありました。
主要なネット銀行を中心に、新しい住宅ローンの取り組みや商品改定・キャンペーンも開催されていますし、新サービスや商品性変更も散見されています。
最近の商品性変更の例としては、住信SBIネット銀行が、物件価格に対して借入金額が80%以下(自己資金が20%以上)となる方を対象にして金利引き下げを実施したこと、SBI新生銀行が「手数料定額型」「手数料定率型」の2つの住宅ローンの提供を開始したことなどが挙げられます。
SBI新生銀行は、変動金利を優遇するキャンペーンを非常にインパクトのあるキャンペーンを実施しています。
また、ソニー銀行は自己資金の割合によって行なっていた金利優遇を廃止し、借り換え向けの変動金利引き下げキャンペーンを行うことで、最優遇金利の適用を受けることができれば、「がん100%保障団信」が付いて0.2%台という非常に低金利となっています。
前述の通り、固定金利はやや上昇傾向が続いています。日銀の金融緩和政策修正による長期金利(10年国債利回り)の上昇が影響している形です。そのため、今月も固定金利はおおむね0.1%から0.2%程度上昇しています。代表的な商品である「フラット35」の金利も上昇傾向にあります。
競争が激化して変動金利が低下する一方で、金融政策の影響で固定金利は上昇しており、変動金利と固定金利の金利差が再び大きく広がっています。不動産価格が高騰する中、変動金利の低水準は堅持されていると考えられます。
3. 金利予測と市場分析
変動金利の見通し
変動金利は通常、「短プラ(短期プライムレート)」と呼ばれる金利指標が基準となっていますが、この短プラは2009年頃から全く変化していない状態が続いています。とはいえ短プラは日銀の政策金利の影響を受けるため、物価上昇率や日銀の金融政策に注視が必要です。
日銀がマイナス金利政策を終了したことで住宅ローン金利を含む、世の中の金利が軒並み上昇傾向です。引き続き、日銀の金融緩和政策の動きに注目が集まっています。
固定金利の見通し
前述のとおり、マイナス金利は終了しても、引き続き、大規模な金融緩和は継続されていて大きく方向転換しているわけではありません。すでに長期金利は1%を超える水準をタッチしており、今後、どこまで金利が上昇するのか、日銀がどの程度の金利上昇を許容するかに注目です。
まとめ
現在も、基本的には日銀は金融緩和を続けていることから、金利は引き続き低水準が見込まれます。
銀行ごとに住宅ローンの金利差がある場合でも、「付帯サービスの充実度」「繰り上げ返済の利便性」「諸費用の安さ」といった金利以外の商品特性を総合的に検討することが重要です。単に「金利が上がりそうだから」という焦りではなく、資金計画をしっかりとたて、家計状況やライフプランに合った商品・金利を選ぶことが大切です。