2024年後半以降、ついに住宅ローンの変動金利タイプにおける「基準金利」の引き上げが始まりました。これは、日本における17年ぶりの大きな金利環境の転換点と言えます。
これまで数年間、日本の住宅ローン利用者の多くは「変動金利型」を選んできました。その理由は、固定金利に比べて圧倒的に低い金利水準にあります。しかし、変動金利型の最大のリスクである「金利上昇に伴う返済額の増加」が、いよいよ現実のものとなってきました。
特に2025年に入ってからは、多くの金融機関が相次いで住宅ローン金利の引き上げを実施しています。中でも、ソニー銀行は他行に先駆けて変動金利の基準金利を引き上げており、その動きが市場でも注目されました。ただし、他の主要銀行も次々と追随する形で金利改定を行っており、今後2〜3ヶ月のうちに金利差はおおむね収束していくと見られます。
今後、住宅ローン選びにおいては「金利上昇リスク」への備えがますます重要になってくるため、返済計画の見直しや固定金利タイプへの切り替え検討も含めた総合的な判断が求められます。
実は、大半の金融機関の住宅ローンの変動金利タイプには、金利上昇リスクによる毎月の返済額の増加額を緩和するために特定のルールとして、「5年ルール」と「125%ルール」が用意されています。このルールがあることで、変動金利を選択した場合でも、ある程度の安心感を得ることができますが、逆に注意しなければいけないこともあります。
この記事では、5年ルールと125%ルールをわかりやすく解説するとともに、ソニー銀行で変動金利にこのルールが適用になるのかを説明していきます。
目次
変動金利の5年ルールとは?
住宅ローンの変動金利型には、「5年ルール」と呼ばれる仕組みがあります。これは、金利が上昇した場合でも5年間は毎月の返済額が変わらないようにする制度です。金利が据え置かれるわけではなく、実際には適用金利が変動していても、返済額だけが一定に保たれるという特徴があります。
この5年ルールによって、借入直後の5年間は返済額が固定されるため、家計の見通しが立てやすく、支出の安定化に役立ちます。特に教育費や生活費とのバランスを取りながら住宅ローンを返済する世帯にとっては、大きな安心材料となります。
しかし、見落とされがちなポイントもあります。それは、返済額の内訳が変化するということ。金利が上がれば、毎月の返済に占める利息の割合が増え、元金の返済スピードが落ちることになります。つまり、「見かけ上は変わらないが、実質的には総返済額が増えている」状態になってしまう可能性があるのです。
変動金利の125%ルールとは?
「125%ルール」とは?変動金利型住宅ローンの隠れたリスク回避機能
変動金利型住宅ローンには、「5年ルール」と並んで利用者の返済負担を急激に増やさないための仕組みとして、「125%ルール」があります。
この125%ルールとは、5年ルールの適用期間(=5年間の返済額据え置き)が終了したタイミングで、新たに設定される毎月の返済額が、直前の返済額の1.25倍(125%)を超えないように制限するルールです。
例えば、それまでの毎月返済額が10万円だった場合、金利が急上昇したとしても次回からの返済額は最大12万5,000円までに抑えられます。この制度があることで、金利急騰による返済額の急増──たとえば1.5倍や2倍といった家計を直撃するような負担増加──を回避できる仕組みになっています。
しかし一方で、この「安心設計」には落とし穴もあります。返済額の増加が抑えられる分、元金の減りが遅くなり、返済期間が実質的に延びたり、総返済額が増えたりするリスクがあるのです。特に、金利が長期的に高止まりするような局面では、この影響は顕著になります。
変動金利型住宅ローンを選ぶ場合には、こうした「125%ルール」の存在をメリットと捉えるだけでなく、長期的な返済計画のシミュレーションをしっかりと行うことが重要です。
5年ルール、125%ルールのメリット
住宅ローンを変動金利で契約した場合、金利が上昇すると返済額も増えることが心配ですが、多くの金融機関はこのリスクを軽減するために5年ルールと125%ルールを設けています。
たとえば、子どもの学費などで複数年は返済額を増やすことが難しいといった状況でも、5年間は返済額が変わらない猶予があるため、その間に収支を改善する機会を持つことができます。さらに、6年目以降も元の返済額の125%までしか増えないため、家計が急に圧迫されることはありません。
このように、5年ルールと125%ルールは、変動金利で住宅ローンを組む際に、金利の変動による不安を軽減し、より計画的な家計管理を支援するための有効な手段となります。
5年ルール、125%ルールのデメリット
確かに、5年ルールや125%ルールは、短期的に返済額の急激な上昇を抑える役割を果たしますが、これらのルールには注意すべきデメリットも存在します。
5年ルールや125%ルールで返済額が一時的に変わらなくても、最終的にはローンの完済が求められるため、金利が上昇した場合、その返済はローンの返済期間の終盤に集中することになります。これにより、住宅ローンの終盤に予想外の大きな金額を返済する必要が出てくる可能性があるのです。
また、5年ルールや125%ルールは、「返済額の増加を緩やかにする」ものであり、「総返済額を減少させる」わけではありませんので、住宅ローンの総返済額は増えることになります。これらのルールがあることで、返済額が一時的に安定するメリットがある一方で、総返済額が増えたり、将来的には高額な返済が求められる可能性があります。適切な貯蓄や資金計画を立てたり、繰上げ返済を積極的に行うなどの対策を考える必要があります。
ソニー銀行には5年ルール、125%ルールは存在する?
ソニー銀行の住宅ローンには、5年ルールや125%ルールがありません。つまり、金利変動があると早いタイミングで毎月の返済額が変動する可能性がありますが、言い方を変えると、住宅ローンの元金返済をしっかりと進めて、住宅ローンの総支払額が極端に増えることが無いようにすることで、金利変動リスクを抑えられることもできる商品性となります。
125%ルールが適用される状況ってどんなとき?
例えば100,000円の返済額が125,000円に上昇するように、毎月の返済額が125%も上昇する状況ということはどのくらいの金利上昇が起きている状況なのでしょうか。
大まかなイメージですが、当初0.5%の変動金利で借り入れしている人であれば、借り入れの後に変動金利が2.0%ぐらいまで上昇すると125%ルールが発動されることになります。
つまり変動金利が金利上昇局面に入っても、2%を超える程度まで大きな金利上昇がなければ125%ルールの効果は発揮されないという計算になりますので、金利上昇で利息の支払いに不安があるという人でも、実際にはお守り程度の機能として捉えておくのがよいでしょう。
まとめ
多くの金融機関が「5年ルール」や「125%ルール」を採用していますが、一部の銀行ではこれらのルールを採用していない変動金利の住宅ローンも存在します。このタイプのローンでは、5年間の返済額の固定がなく、金利の見直し時に市場の金利が上昇していれば、その影響が直ちに返済額に反映されます。その結果、金利が急激に上昇すると返済額も大幅に増加するリスクがあります。
一方で、返済額の固定期間や上昇率の制限がないため、住宅ローンの終盤において未返済分を一括で支払うような事態は発生しません。これは、金利上昇の影響がリアルタイムで返済額に反映されるため、蓄積される未返済分がないことに起因します。
したがって、どちらのタイプの住宅ローンを選ぶかは、個々の金融状況やリスク許容度によって異なります。5年ルールや125%ルールがあるローンは、短期間の金利変動の影響から保護されるメリットがありますが、長期的に見た場合には、最終的な返済総額が増加する可能性があります。一方で、これらのルールを採用していないローンは、金利の変動が直接返済額に反映されるため、金利が安定している時期には有利ですが、金利が上昇した場合の影響を即座に受けます。
金利上昇による返済額の上昇リスクを抑えるためには、固定金利への借換等も検討してみると良いでしょう。
住宅ローンを選ぶ際は、これらの特性を理解し、自分の返済能力、将来の収入見込み、そして市場の金利動向を考慮して、ご自身が納得する選択をすることが重要です。