2024年10月から、国内の多くの金融機関が住宅ローンの変動金利の引き上げに動いており、これは実に約17年ぶりの大きな転換点といえます。
この動きを受けて、これから変動金利型住宅ローンを利用しようと考えている方や、すでに変動金利で借入中の方にとって、今後の金利動向は非常に気になるところでしょう。特に、金利の上昇が家計にどのような影響を与えるか、不安を感じている方も少なくありません。
変動金利型の住宅ローンは、金利が一定期間ごと(一般的には半年ごと)に見直される仕組みとなっています。そして、この金利を上げ下げするかどうかの最終判断権は、基本的に金融機関側が持っています。
つまり、金融機関が「金利を上げる」と判断した場合には、借入中の住宅ローンの金利が上昇し、毎月の利息額も増加することになります。その結果、元本の返済スピードが落ちてしまうため、返済総額や返済期間が長期化するリスクもあります。
特に金利が急上昇した場合には、月々の支払い負担が大きく増え、家計に与える影響も無視できません。こうしたリスクを抑えるために、変動金利型住宅ローンには一定の制限ルールが設けられています。それが、「5年ルール」と「125%ルール」です。
目次
5年ルールとは?
「5年ルール」とは、住宅ローンの契約後、原則として5年間は毎月の返済額が変更されないというルールです。たとえ半年ごとに金利が見直されていたとしても、返済額自体は5年間据え置きとなります。
このルールのおかげで、変動金利型でもある程度の返済計画の見通しが立てやすくなるというメリットがあります。金利が多少変動しても、5年間は毎月の支払いが変わらないというのは、特に子育て世帯や共働き家庭にとっては大きな安心材料となるでしょう。
125%ルールとは?
もうひとつの重要なルールが「125%ルール」です。これは、5年ごとの返済額見直しのタイミングで、たとえ金利が大幅に上昇していたとしても、前回の返済額の1.25倍までしか増えないという上限規制のことを指します。
例えば、5年前の返済額が10万円だった場合、次回の更新での返済額は最大でも12万5,000円までに抑えられます。急激な返済額の上昇を抑えるこの仕組みは、家計の急変を防ぐクッションとして非常に有効です。
5年ルール、125%ルールのメリット
住宅ローンを変動金利で契約した場合、金利が上昇すると返済額も増えることが心配ですが、多くの金融機関はこのリスクを軽減するために5年ルールと125%ルールを設けています。
たとえば、子どもの学費などで複数年は返済額を増やすことが難しいといった状況でも、5年間は返済額が変わらない猶予があるため、その間に収支を改善する機会を持つことができます。さらに、6年目以降も元の返済額の125%までしか増えないため、家計が急に圧迫されることはありません。
このように、5年ルールと125%ルールは、変動金利で住宅ローンを組む際に、金利の変動による不安を軽減し、より計画的な家計管理を支援するための有効な手段となります。
5年ルール、125%ルールのデメリット
確かに、5年ルールや125%ルールは、短期的に返済額の急激な上昇を抑える役割を果たしますが、これらのルールには注意すべきデメリットも存在します。
5年ルールや125%ルールで返済額が一時的に変わらなくても、最終的にはローンの完済が求められるため、金利が上昇した場合、その返済はローンの返済期間の終盤に集中することになります。これにより、住宅ローンの終盤に予想外の大きな金額を返済する必要が出てくる可能性があるのです。金利が上昇してもその分の返済を先延ばしすることができるという方がわかりやすいかもしれません。
5年ルールや125%ルールは、「返済額の増加を緩やかにする」ものであり、「総返済額を減少させる」わけではありません。
そのため、これらのルールを利用する際は、返済額が一時的に安定していても、将来的には高額な返済が求められる可能性を念頭に置き、適切な貯蓄や資金計画を立てることが望ましいでしょう。
フラット35には5年ルール、125%ルールは存在する?
結論から言えば、フラット35にはこのようなルールは存在しません。というのも、フラット35は最初から完済まで金利が固定されている住宅ローンであるため、金利が上がっても下がっても、月々の返済額が変わることは一切ありません。
つまり、金利上昇リスクに備えたい方や、長期にわたって安定した返済を希望する方にとっては、フラット35は非常に安心感のある選択肢といえるでしょう。
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125%ルールが適用される状況とは?
例えば100,000円の返済額が125,000円に上昇するように、毎月の返済額が125%も上昇する状況ということはどのくらいの金利上昇が起きている状況なのでしょうか。
大まかなイメージですが、当初0.5%の変動金利で借り入れしている人であれば、借り入れの後に変動金利が2.0%ぐらいまで上昇すると125%ルールが発動されることになります。
つまり変動金利が金利上昇局面に入っても、2%を超える程度まで大きな金利上昇がなければ125%ルールの効果は発揮されないという計算になります。
まとめ
そもそもフラット35は全期間固定金利の住宅ローンなので、借入期間中に金利情勢の影響を受けて金利変動することがないので、5年ルールも125%ルールも適用されない、という点はご理解いただけたかと思います。
多くの金融機関が「5年ルール」や「125%ルール」を採用していますが、一部の銀行ではこれらのルールを採用していない変動金利の住宅ローンも存在します。このタイプのローンでは、5年間の返済額の固定がなく、金利の見直し時に市場の金利が上昇していれば、その影響が直ちに返済額に反映されます。その結果、金利が急激に上昇すると返済額も大幅に増加するリスクがあります。
一方で、返済額の固定期間や上昇率の制限がないため、住宅ローンの終盤において未返済分を一括で支払うような事態は発生しません。これは、金利上昇の影響がリアルタイムで返済額に反映されるため、蓄積される未返済分がないことに起因します。
したがって、どちらのタイプの住宅ローンを選ぶかは、個々の金融状況やリスク許容度によって異なります。5年ルールや125%ルールがあるローンは、短期間の金利変動の影響から保護されるメリットがありますが、長期的に見た場合には、最終的な返済総額が増加する可能性があります。一方で、これらのルールを採用していないローンは、金利の変動が直接返済額に反映されるため、金利が安定している時期には有利ですが、金利が上昇した場合の影響を即座に受けます。
少し違う目線での話になりますが、金利上昇による返済額の上昇リスクを抑えるためには、固定金利への借換等も有効な手段の一つです。
住宅ローンを選ぶ際は、これらの特性を理解し、自分の返済能力、将来の収入見込み、そして市場の金利動向を考慮して、ご自身が納得する選択をすることが重要です。