住宅ローンに5年ルール・125%ルールは必要?

2024年3月の日銀の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の終了(利上げ)を含む金融政策の変更が決定されました。

 

日銀が利上げを行うのは、20072月に政策金利(無担保コール翌日物金利)を0.25%前後から0.5%前後に引き上げて以来、約17年ぶりとなります。

 

また、続く7月にも政策金利の引き上げを決定したことで、いままで長年低位安定していた各金融機関の変動金利も、各行引き上げに動きました。

 

17年振りの利上げ局面に、これから住宅ローンを借りる人、すでに住宅ローンを借りている人ともに一抹の不安を覚えた方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、金利上昇局面でも住宅ローン利用者の返済負担を緩和する機能がある「5年ルール・125%ルール」についてわかりやすく解説していきます。

 

 

5年ルール・125%ルールとは

 

住宅ローンで変動金利を選択した場合、一般的に借入後半年に一度金利が見直されますが、仮に金利が上昇しても、すぐに毎月の返済額が増えるわけではありません。

 

多くの金融機関では、住宅ローンの変動金利に「5年ルール」という仕組みを設けています。このルールにより、金利が上昇しても、最初の5年間は毎月の返済額が変わらないように定められています。

 

さらに、5年が経過した後の6年目以降においても、毎月の返済額は前回の返済額の125%を超えて増額することはできないというルールがあります。例えば、毎月の返済額が10万円だった場合、金利が変更されても、次の返済額は最大で12.5万円にしかなりません。これは、毎月の返済額が急激に増えないようにするための措置で、「125%ルール」と呼ばれています。

 

5年ルールと125%ルールのメリット

 

住宅ローンを変動金利で契約した場合、金利の上昇により返済額が増加することを心配される方も多いですが、多くの金融機関はこのリスクを軽減するために「5年ルール」と「125%ルール」を設けています。

 

たとえば、子どもの学費などの負担が重なる時期に返済額を増やすのが難しい状況でも、5年間は返済額が変わらないという猶予があります。これにより、その期間内に収支を改善する機会を持ったり、家計について計画的に見直す時間を確保することができます。また、6年目以降も元の返済額の125%までしか増えないため、急激に返済額が倍増するような事態を防ぐことができます。

 

このように、5年ルールと125%ルールは、変動金利で住宅ローンを組む際に、金利変動による不安を軽減し、計画的な家計管理を支援するための有効な手段となります。

 

5年ルール、125%ルールのデメリット

 

これまで説明したように、5年ルールや125%ルールは短期的に返済額の急激な上昇を抑える効果がありますが、注意すべきデメリットも存在します。

 

まず、認識しておくべき点は、5年ルールや125%ルールによって返済額が一時的に変わらなくても、最終的にはローンを完済しなければならないということです。急激に金利が上昇した場合、これらのルールにより返済額の増加が抑えられる一方で、その未払い分の返済は住宅ローンの返済期間の終盤に集中する可能性があります。

 

この結果として、最終的には一括返済を求められる可能性があり、ローンの終盤に予想外の大きな金額を返済しなければならなくなるリスクが生じます。

 

また、5年ルールや125%ルールは「返済額の増加を緩やかにする」ものであり、「総返済額を減少させる」わけではないという点も重要です。つまり、返済額が一時的に安定していても、将来的には高額な返済が必要になる可能性があります。

 

このため、これらのルールを利用する場合でも、将来の金利上昇や返済負担を見据えた適切な貯蓄や資金計画を立てることが重要です。

 

125%ルールは意味がない!?

 

例えば、毎月の返済額が100,000円から125,000円に増加するような状況は、どの程度の金利上昇があった場合に発生するのかを考えてみましょう。

 

仮に、当初0.5%の変動金利で住宅ローンを借り入れていた場合、金利が2.0%程度まで上昇すると、125%ルールが発動され、毎月の返済額が125%に上昇することになります。これは、変動金利が2%を超えるような大きな金利上昇が起きなければ、125%ルールの効果は発揮されないことを意味します。

 

まとめ

 

多くの金融機関が「5年ルール」や「125%ルール」を採用していますが、一部の銀行ではこれらのルールを採用していない変動金利の住宅ローンも存在します。

 

このタイプのローンでは、5年間の返済額の固定がなく、金利が上昇した際にその影響が即座に返済額に反映されるため、金利が急激に上昇した場合には返済額も大幅に増加するリスクがあります。

 

一方で、返済額の固定期間や上昇率の制限がないため、住宅ローンの終盤において未返済分を一括で支払うリスクがありません。これは、金利上昇の影響が即時に返済額に反映され、未払いの利息や元本が蓄積されないためです。

 

したがって、どちらのタイプの住宅ローンを選ぶかは、個々の経済状況やリスク許容度によって異なります。「5年ルール」や「125%ルール」があるローンは、短期的な金利変動から保護されるメリットがありますが、長期的には返済総額が増加する可能性があります。

 

一方、これらのルールを採用していないローンは、金利変動が直ちに返済額に反映されるため、金利が安定している時期には有利ですが、金利が上昇した場合にはその影響を即座に受けます。

 

住宅ローンを選ぶ際には、これらの特性を理解し、自身の返済能力や将来の収入見込み、そして市場の金利動向を考慮しながら、最適な選択をすることが重要です。

 

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