この記事ではペアローンと収入合算の違いやメリット・デメリット、ミックスローンについて解説しています。
以下の2024年4月28日の日本経済新聞に掲載されていた以下の記事を確認してください。筆者の想像以上のペースで、ペアローンを利用する夫婦・世帯が増加していることがわかります。
住宅購入を検討している共働き世帯のあいだで、近年注目が集まっているのが「ペアローン」や「収入合算」といった、2人の収入を活用して住宅ローンを借りる方法です。従来は、夫婦のどちらかが単独で住宅ローンを契約するケースが多く見られましたが、物件価格の高騰や共働き世帯の増加に伴い、2人の収入を前提にした借入方法が急速に広まりつつあります。
2024年4月28日に掲載された日本経済新聞の記事によると、特に新築マンションにおいてペアローンの利用が急増しているとのことです。2023年の首都圏におけるペアローン利用率は約34%と過去最高を記録しており、20代に限って見ると、単独で借りる場合と比べて借入額は約1.9倍に達しているそうです。背景には、共働き世帯の増加に加え、女性の正規雇用率の上昇もあると指摘されています。
こうした社会背景から、「ペアローン」「収入合算」、そしてその中間的な仕組みである「ミックスローン」など、2人の収入を活用した住宅ローンの仕組みがより注目されるようになってきました。住宅ローンを組む際に単独で借入するのが難しいケースでも、2人で協力することで資金計画の選択肢が広がり、購入可能な物件の幅も広がるというメリットがあります。
この記事では、ペアローンと収入合算の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて丁寧に解説するとともに、両者の特徴を取り入れたミックスローンについても紹介していきます。夫婦やパートナーで住宅ローンを組む予定のある方は、ぜひ参考にしてください。
ペアローンの概要
ペアローンは、配偶者やパートナーと共同で住宅ローンを組む方法です。
「共同」と言うのは、簡単に言えば2人の収入を活用して住宅ローンを借り、そのお金でマイホームを購入する、という意味です。冒頭の記事のように、夫婦共働きが当たり前の社会になった今、すでに20代~30代の若い夫婦世帯ではペアローンや収入合算の利用が一般的になっています。
ペアローンを利用することで、二人の収入をもとに住宅ローンの審査が行われることになるため、住宅ローン借り入れ可能金額が増えます。借入可能金額が増えれば購入できるマイホームの幅は広がりますし、住みたいと思っていた物件を購入できる可能性が高まることになります。
ペアローンのメリット
借り入れ可能が増える
ペアローンを利用する目的は、希望するマイホームを購入できる金額の住宅ローンを借りることです。ペアローンを利用することで、夫婦やパートナー間の収入を利用して住宅ローンを借りることになるので、単独で住宅ローンを申込むよりも高額な金額を借りることが可能になります。単独の収入で借りられる金額では希望するマイホームを買えない時に利用するケースが大半です。
金利が優遇される可能性がある
実は、二人分の収入の合算することで、金融機関からの信用度が上がり、金利の優遇を受ける可能性があります。優遇されるというと特別なことに聞こえますが、特別に優遇されるわけではなく、あらかじめ銀行側が用意している金利の幅の中の低い金利が提示されやすくなる、ということです。
ちなみに、ネット銀行の住宅ローンのように適用する金利に幅が無い場合、原則として審査結果で金利が変わることがありません。つまり、金利が優遇される可能性はほとんどありません。
税制面でのメリットがある
ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを利用することになります。そのため、住宅ローン控除をそれぞれが利用できるというメリットがあります。
住宅ローン控除は制度が頻繁に変わりますが、例えば、1人で住宅ローンを借りた場合に年40万円×10年で400万円の節税効果を得られる制度の場合、ペアローンであればその2倍の800万円の控除を夫婦で得られる場合もあるということです。
2人それぞれ団信に加入できる
ペアローンの場合は、夫婦それぞれで団信に加入することになります。
夫婦それぞれに死亡保障等がつきますので、借り入れ期間中に万が一の事態に対する備えのバランスが高まる効果があり、マイホーム購入・住宅ローンの契約の様々なリスクが低減されていると言えます。
PayPay銀行やみずほ銀行でペア連生団信という種類の団信もとり扱っています。連生団信とは借入期間中にいずれか一方に万一のことがあった場合には両者のローン債務残高が保険金により完済されるというものです。
住宅ローンを契約するお客さまにとっては「生計の安定」を図ることができるとても手厚い保障といえます。
PayPay銀行のペア連生団信については以下の記事で解説していますので、ご参考になさってください。
ペアローンのデメリット
連帯責任になる
前述の通り、ペアローンは2人が別々の住宅ローンを組むのですが、完全に関係がないわけではありません。ペアローンを利用するには、両者がお互いに連帯責任を負う必要があります。
相互に連帯保証することになるので、仮にどちらかが支払い不能になった場合、残された1人で全額を負担する必要があります。借りる金額が、最初から1人でも借りられる金額であれば問題にはならないでしょうが、1人では借りられない金額をペアローンの仕組みを活用して借りる場合、片方が支払い不能になると、急に毎月の返済負担が大きくなるので注意しましょう。
離婚時の問題
夫婦間での離婚などの事態が発生した場合、住宅ローンの扱いは確実に複雑になります。夫婦の関連性により複雑さや手続きは異なりますが、ペアローンを利用していると、離婚時に財産分与・誰が住むか、など煩雑な手続きや交渉が必要になるでしょう。
収入減のリスク
どちらかの収入が減少した場合、例えば、子供ができて産休や育休になったり、退職してパートに切り替えた場合など、住宅ローンの返済負担が許容範囲を超えてしまう可能性があります。
収入合算のメリットとデメリット
収入合算の概要
収入合算は、住宅ローン申込時に配偶者や共働きのパートナーの収入を合算して審査に用いる方法です。
収入合算のメリット
審査通過率の向上
合算により総収入が増えるため、ローンの審査通過率が向上します。
返済能力の向上
両者の収入を合わせることで、返済能力が高まり、より良い条件でのローンが可能になる場合があります。
収入合算のデメリット
リスクの共有
収入合算を行うと、ローンに関するリスクも共有されます。一方の収入が不安定になると、返済計画に影響を及ぼす可能性があります。
法的責任の共有
住宅ローンの返済に関する法的な責任も共有されるため、関係の変化があった場合に問題が生じることがあります。
ミックスローンのメリットとデメリット
ミックスローンの概要
ミックスローンは、固定金利と変動金利の両方を組み合わせた住宅ローンです。ペアローンや収入合算と混同されてしまうこともありますが、全くの別物です。
ミックスローンのメリット
リスク分散
固定金利と変動金利を組み合わせることで、金利リスクを分散できます。
金利変動の柔軟な対応
金利環境の変化に応じて、固定部分と変動部分の割合を調整することで、より効率的な返済計画を立てられます。
ミックスローンのデメリット
複雑性
固定金利と変動金利の組み合わせは、ローンの構造を複雑にし、理解や管理が難しくなる可能性があります。
計画性の難しさ
金利の変動によって返済額が変わるため、長期的な返済計画を立てるのが難しくなることがあります。
まとめ
住宅ローンを検討する際に、多くの人が悩むのが「どの借入スタイルを選ぶべきか」という点です。とくに共働き世帯にとっては、ペアローン・収入合算・ミックスローンといった2人の収入を活かす借入方法が現実的な選択肢として注目されています。それぞれの方法には特徴があり、メリット・デメリットを正しく理解したうえで、自身のライフプランに合った選択をすることが大切です。
まず、ペアローンは夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約する仕組みで、収入に応じて高額なローンを組みやすくなるのが最大のメリットです。たとえば、1人で3,000万円しか借りられなかった場合でも、2人でそれぞれ3,000万円ずつ借りれば、合計6,000万円の住宅購入が可能になります。また、金融機関によってはペアローンを利用することで金利の優遇を受けられるケースもあります。
しかしながら、ペアローンには注意点もあります。夫婦それぞれが借主となるため、双方に返済義務が生じる「連帯責任」が発生します。また、将来的に離婚や収入の変化があった際には、どちらか一方がローン全額を抱え込むなどの法的・金銭的トラブルに発展するリスクも考えられます。
次に、収入合算とは、主たる債務者の収入に加えて、配偶者や親などの収入を合算して審査する方法です。この仕組みを利用すれば、単独では審査に通らなかったケースでも、合算された収入をもとに審査が進められるため、借入可能額が増える可能性があります。また、住宅ローン控除など税制上の扱いが比較的シンプルで、事務手続きもスムーズなのが特徴です。
ただし、収入合算にもデメリットがあります。たとえば、合算者が連帯保証人あるいは連帯債務者となるため、債務者が返済できなくなった場合には、合算者にも返済義務が生じます。このように、リスクを共有する構造であることを十分に理解しておく必要があります。
そして、ミックスローンは、固定金利と変動金利を組み合わせるなど、異なる条件のローンを1件の契約の中で使い分ける手法です。たとえば、半分は固定金利で将来の金利変動に備え、残り半分は低金利の変動型でスタートする、といった具合に、金利リスクの分散や柔軟な資金計画が可能となります。
一方で、ミックスローンはその仕組みが複雑になりやすく、シミュレーションや計画が難しくなる傾向があります。金融機関によって商品設計が異なるため、慎重に比較・検討しないと後から想定外の返済負担が生じる可能性もあります。
これらの3つの選択肢は、いずれも「2人の力で理想の住まいを手に入れる」という考え方に基づいた住宅ローンのあり方ですが、仕組みや契約の重み、将来のリスクも踏まえた上で、慎重に選ぶ必要があります。家庭の状況や今後の働き方、ライフプランに合わせて、最適な選択肢を見つけてください。
なお、具体的な商品としては、三菱UFJ銀行のペアローン、みずほ銀行の収入合算ローン、りそな銀行のミックスローンなどが参考になります。それぞれの銀行で条件や金利、手数料の違いがありますので、比較しながら検討を進めていくとよいでしょう。